コロッケって、揚げ物の中でいちばん「なんとなく作れる気がする」料理だと思う。でも実際に作ってみると、破裂する。衣がはがれる。なんかパサパサする。「あれ、お肉屋さんのと全然違う……」そんな経験、一度くらいはありませんか。
今回は、そのモヤモヤを解消するために2つのレシピを組み合わせました。ひとつは我が家で長年作り続けてきたお肉屋さん風肉じゃがコロッケ。もうひとつは、予約の取れない名店「賛否両論」の笠原将弘シェフがYouTubeで公開しているポテトコロッケ。
プロの手順と、家庭の知恵。どちらも「なぜそうするか」に理由がある。両方知ってから作ると、コロッケは別物になります。
まず知っておきたい「じゃがいもの選び方と茹で方」
コロッケの主役はじゃがいも。なのに、ここを雑にやると後が全部崩れます。
笠原シェフのレシピでは男爵いもを使います。粉質でほくほく感が出やすく、潰したときにクリーミーな食感になるから。メークインは水分が多くてねっとり系なので、コロッケには不向きです(メークインで作ったことがある人、なんか違うなと思ったはずです。あれはそういうことです)。
春先〜夏にかけては新じゃがが出回りますが、これはこれで面白い。水分が多いのでトロトロモチモチの食感になり、牛乳や生クリームなしでも驚くほどなめらかなコロッケになります。「新じゃがコロッケ」と「男爵コロッケ」、食べ比べてみるのも楽しいですよ。
絶対に守ってほしい「皮つきのまま茹でる」ルール
これ、本当に大事。じゃがいもは皮ごと水から茹でるのが正解です。
なぜか? 皮を剥いてから茹でると、じゃがいもが水を吸いすぎてべちゃっとなる。仕上がりがぼそぼそするし、余分な水分のせいでコロッケが破裂しやすくなる。皮がバリアになって、旨味も水分も適度に守ってくれるんです。
レンジ派の方はラップをかけずに加熱するのがポイント。余分な蒸気が逃げて、水っぽくなりません。

茹で上がったら、タオルの上にキッチンペーパーを当てて皮を剥きます。素手でやろうとすると……火傷します。
himetei一個目は、熱すぎて床に放り投げちゃいました💦 タオル+キッチンペーパーの二重装備、これは本気でおすすめします。
潰し方は「ざっくり」でいい
熱いうちにマッシャーで潰すのが鉄則ですが、ここで完全にペースト状にしてしまうのは逆効果。少しゴロゴロ感が残るくらいのざっくり潰しにすると、ホクホク感が生きます。なめらかさを重視したいなら空炒りして水気を飛ばしてから潰すと◎。


笠原シェフ流ポテトコロッケ:シンプルだから手順が命
材料は本当にシンプル。じゃがいも、玉ねぎ、豚ひき肉だけ。でも「シンプルな料理こそ1個1個の工程がちゃんと仕上がりに出る」と笠原シェフは言います。これ、作ってみると本当にそうでした。
材料(4〜5人分/コロッケ約12個)
じゃがいも(男爵)3個・玉ねぎ1/2個・豚ひき肉150g・バター10g・塩・コショウ・サラダ油(少々)・薄力粉・パン粉・キャベツの千切り・中濃ソース
【下味A(コロッケの味の骨格)】酒 大さじ2・醤油 大さじ1・みりん 大さじ1・砂糖 小さじ1・片栗粉 大さじ1
【衣液B】卵1個・牛乳 大さじ1.5 (※お肉屋さん風にするなら、バッター液(小麦粉+水)だけで大丈夫。卵・牛乳なしバージョンは後で紹介します。)
ジャガイモ餡の作り方
① じゃがいもを皮つきのまま茹でる(または電子レンジで加熱)
鍋にひたひたの水と塩少々を加え、水から茹でる。竹串がスッと通るくらいまで柔らかくなったらお湯を捨て、熱いうちに皮をむく。鍋に戻して空炒りし、水分を飛ばしてからマッシャーでざっくり潰す。
② 玉ねぎをみじん切りにする
みじん切りが面倒な方はフードプロセッサーやぶんぶんチョッパーが便利。玉ねぎのみじん切りをラクにするキッチングッズはこちらでも紹介しています。
③ 玉ねぎをじっくり炒める
フライパンにバターを熱し、みじん切りの玉ねぎと塩(2つまみ程度)を加え、中火でじっくり炒める。うっすら焼き色がつくまで炒めることで、玉ねぎの甘みがしっかり引き出される。
④ ひき肉を加えて炒め、「コロッケ太郎」を作る
玉ねぎに焼き色がついたら豚ひき肉を加え、塩・コショウをふる。肉の脂がテカテカと出てくるまでしっかり炒め、臭みを飛ばす。
火を弱めたら、酒・醤油・みりん・砂糖・片栗粉を混ぜ合わせた下味Aを加えて炒め合わせる。片栗粉でほんのりとろみをつけることで、具材の旨みを閉じ込め、じゃがいもと合わせたときにクリーミーでまとまりのあるタネになる。


⑤ じゃがいもと合わせて冷ます
潰したじゃがいもに④の具材を加え、全体がなめらかになるまで混ぜる。必要に応じて塩・コショウで味を調える。


混ぜ終わったらバットに広げて常温まで冷まし、ラップをかけて冷蔵庫でしっかり冷やす。急いで成形すると崩れやすくなるため、ここは焦らないことが大切。


ここポイント
タネをしっかり冷やすことが、「揚げても爆発しない」「ベタつかず成形しやすい」最大の秘訣です。
衣のつけ方:笠原流は卵+牛乳の卵液で
冷えたタネを食べやすいサイズに成形したら、衣をつけていきます。笠原シェフは卵1個+牛乳大さじ1.5をしっかり混ぜた卵液を使います。
順番は薄力粉 → 卵液 → パン粉。薄力粉をしっかりまぶしてから卵液にくぐらせると、衣が均一につきます。


きれいに衣がつきました。このまま揚げるまで冷蔵庫に戻しておくと、さらに安心。
お肉屋さん風にしたい人向け:バッター液という選択肢
「卵を1個しか使わないのにコロッケ12個も衣つけるの?」とか「卵液作るのが面倒」という日は、バッター液という技があります。お肉屋さん風コロッケのもうひとつの顔です。



バッター液の作り方は簡単。小麦粉と水を1:1で混ぜるだけ。小麦粉100gなら水100cc。これにタネをくぐらせてパン粉をつけるだけで、卵いらず!


バッター液はタネへの密着がよく、揚げたときに衣が均一にサクサクに仕上がります。大量に作るときや、「今日は卵がない」という緊急事態にも重宝。プロの総菜屋さんが使うのも、実はこの理由からです。


【最重要】生地は徹底的に「完全冷却」する!



コロッケ破裂問題、これ本当に多くの人が悩んでいますね。
揚げている最中に衣が破裂してしまう一番の原因は、生地が温かいまま衣をつけてしまうことです。バットなどに広げ、常温で冷ました後に冷蔵庫で完全に冷やすことで、失敗を防ぐことができます
メカニズムは単純で、タネが温まって水蒸気が出て、衣の薄いところから一気に噴き出すのが原因。だからポイントもシンプル。
要するに「タネを冷やす」「衣を均一にする」「油の温度を保つ」の3点セット。これを守れば、破裂とはほぼ無縁になれます。


① タネを冷蔵庫でしっかり冷やしておく(粗熱が取れたら必ず冷蔵庫へ)
② 衣を均一に、丁寧につける(薄いところから水蒸気が逃げます)
③ 笠原シェフの推奨は160℃前後の低めの油温でじっくり揚げる。油に入れたら最初はさわらない
④ 一度に揚げるのは2〜3個まで。入れすぎると油温が下がって衣がベタつく
⑤ 途中で1回ひっくり返して、合計3〜4分揚げたら完成
「高温で一気に揚げたほうがサクサクになるのでは?」と思いがちですが、それだと中が温まる前に衣だけ焦げます。コロッケは低温からじっくりが正解。外カリッ、中ホクホクを目指すなら焦らないこと。
隠し味は「砂糖」──子どもに好評な理由がここにある
お肉屋さんのコロッケってなんであんなに美味しいんだろう、と長年思っていました。正直に言うと、答えは隠し味の「砂糖」でした。
下味Aの砂糖小さじ1は、料理でいうところの「隠し味」です。甘くなるわけじゃなくて、全体の味がまろやかにまとまる。ひき肉の旨味が前に出てくる感覚があります。少し多めに入れると子どもが特に喜ぶ味になるので、家族に合わせて調整してみてください。
カレーパウダーをひとつまみ加えるとカレーコロッケに早変わりします。これも子どもが大好きなアレンジ。
盛り付けと食べ方:キャベツとソースは省かないで
揚げたてを器に盛り、キャベツの千切りを添えて中濃ソースをかけて食べる。これで完成です。「そんなの当たり前」と思われるかもしれないけれど、この千切りキャベツがコロッケの油っぽさをリセットしてくれて、次の一口をまた美味しくしてくれる。省くと後半に飽きてきます。
余ったコロッケは翌日にコロッケサンドやコロッケうどんにするのがおすすめ。揚げ直しより、電子レンジで温めてからトースターで2〜3分焼くと衣のサクサク感が戻ります。
笠原シェフについて
笠原将弘シェフは、東京・恵比寿の日本料理店「賛否両論」の店主。「正月屋吉兆」での修行を経て、2004年に開店した予約の取れない名店として知られています。YouTubeチャンネル「【賛否両論】笠原将弘の料理のほそ道」では、家庭でも再現できる本格レシピを惜しみなく公開中。動画を見ていると「なぜそうするのか」が毎回きちんと説明されていて、料理の理屈を学ぶのにも役立ちます。
同じ笠原シェフのレシピで、帰宅後10分で作れる一品も当サイトで試してみました。→ 笠原シェフのレタスオイスターソース炒めが初夏の食卓を救う
まとめ:コロッケは「冷やす」と「冷やす」に尽きる
長くなりましたが、結局のところコロッケで大切なのは2回の「冷やす」です。
1回目は潰したじゃがいもとひき肉を合わせた後のタネ。2回目は衣をつけた後の成形済みコロッケ。この2回をサボると、破裂したりベタついたりする。逆に言えば、ここさえ守れば後の手順は多少雑でもそれなりに美味しくできます。
家族みんながつい手が伸びる、懐かしい味のコロッケ。休日のまとめ作りにもぴったりです。
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