※ 本記事は2018年7月の記事をリライトしました。
アスリートのメンタルを支える仕事があることを、あなたはご存知だろうか。
「アスリートメンタルトレーナー」——それは肉体を鍛えるのと同じように、心を鍛える専門家です。実際、2018年の夏、私は取材でその道のプロ、藤中琢也氏と出会った。あの日を境に、自分の中で何かが変わった。
今回は、藤中氏の仕事と、近畿で初めてとなった「医務救護ボランティア」の取り組みについてご紹介したい。
※ 本記事は2018年7月に東洋大姫路野球部OB会サイトへ寄稿した記事を、2025年にリライトしたものです。藤中氏の活動内容・連絡先等は当時の情報をもとにしており、現在は変更されている可能性があります。
猛暑の姫路球場で出会った、アスリートメンタルトレーナー
その夏は、記録的な暑さだった。
全国各地の球場で高等学校野球選手権大会が行われていた7月、私は兵庫大会が開催されている姫路球場を訪れた。目的は、アスリートメンタルトレーナーの藤中琢也氏への取材。じりじりと照りつける太陽の下、球場に足を踏み入れると、グラウンドの熱気と観客席の熱気が一緒くたになって押し寄せてきた。
「今年は特に、試合中に体調を崩す選手が多いんですよ」と藤中氏は静かに語った。その日、彼はメンタルトレーナーとしてではなく、「医務救護ボランティア」として球場にいた。

藤中琢也氏とは?アスリートメンタルトレーナーの顔と、もうひとつの顔
藤中氏のプロフィールを簡単に紹介しておきたい。
本業は、トップアスリートのメンタルを支えるアスリートメンタルトレーナー。練習や試合の現場に同行し、選手の心身の状態を観察しながら、そのときどきに必要なアプローチをとる。傍から見れば「ただ見ているだけ」に映るかもしれないが、実際のところはまったく違う。「全力を尽くして全身で見ている」という言葉が印象的だった。アスリートの心に寄り添い、エネルギーを注ぎ込む作業は、相当に体力と集中力を要するという。
もうひとつの顔が、企業カウンセラーです。心理学的手法を用いて、働く人たちが自らの力で問題を解決できるよう援助する。スポーツと職場、舞台は違えど、「人の心に向き合う」という姿勢は変わらない。
医務救護ボランティアの立ち上げに関わった人
藤中氏の活動でとりわけ印象的だったのが、「医務救護ボランティア」への関わりでした。
話はさかのぼること2012年。球場で熱中症や負傷した選手・観客の初期対応にあたる医療ボランティアの仕組みを、近畿で初めてつくった——その立ち上げに、藤中氏は深く関わっています。医師や看護師など医療資格を持つ方が公募で集まり、当初20〜30名だったボランティアは、取材当時(2018年)には200名を超えるまでに成長していた。

仕事の合間を縫って、今もこの活動を続けている。「仕事だから」ではなく、自発的に。その姿勢に、この人の人柄が滲んでいると思った。
なお、兵庫県大会では医務救護ボランティアスタッフを一般公募しています。医療関係の資格があれば、年齢・性別・野球の専門知識は不問とのこと。
アスリートメンタルトレーニングとは何か

極限のプレッシャーの中でプレーするアスリートたちにとって、心の準備は体と同じくらい重要だ。いや、むしろ「心が整っていなければ、体の能力を出しきれない」と藤中氏は言う。
メンタルトレーニングとは、スポーツ心理学を応用してプログラム化したトレーニングのこと。筋肉を鍛えるのと同じように、心も訓練によって強くなれる——その考え方が土台にある。具体的には、集中力の維持、緊張のコントロール、自己肯定感の強化など、試合で力を発揮するための心理的なスキルを身につけることを目指す。
「選手の心に添い、合わせ、エネルギーを注ぎ込む」という藤中氏の言葉は、取材メモに残っている。
練習で培った技術が、プレッシャーのかかる本番でも発揮されるようにするために、メンタルトレーナーの存在がある。
企業カウンセリングにも通じる「人を支える」哲学
スポーツの現場で培ったメンタルサポートの知見は、企業カウンセリングにも応用されている。働く人が抱える悩みや問題を、自らの力で乗り越えられるよう援助する——この姿勢は、アスリートへのアプローチとまったく同じだと感じた。
「自分を変えたいと思っている人には効果がある」とも聞いた。カウンセリングは魔法ではなく、本人の意志と向き合い方が鍵になる。
カウンセラーとの信頼関係を築くことが、まず最初の一歩だと藤中氏は静かに、でもはっきりと言われていた。
取材後、藤中氏の一言が私を変えた
正直に言うと、この取材は私にとって単なる「仕事」ではなかった。
当時、私は個人的にある悩みを抱えていた。それをどう整理すればいいのか、うまく言葉にできないまま日々を過ごしていた時期だった。
取材を終えたあと、ふとした流れで藤中氏がぽつりと言った一言。
詳細をここに書くつもりはないけれど、その言葉は私の中でずっと引っかかっていたものを、スッと解きほぐしてくれた。
「ああ、そういうことだったのか」…形として理解できた瞬間だった。そこから、新しい一歩を踏み出すことができたのは事実。プロの言葉には、それだけの力がある。
藤中氏は、私にとってターニングポイントとなった恩人のひとりだ。

2024年、藤中氏は「人命救助」で神戸新聞にも掲載された
この記事を書いてからかなり経った2024年、「藤中琢也」の名前を検索して驚いた。兵庫県加古川市のゴルフ場で開かれた大会中、心肺停止となった男性をAEDと心肺蘇生で救助したとして、神戸新聞に掲載されていたのだ。
医務救護ボランティアで培ったスキルが活きた瞬間だった。その場に居合わせた看護師経験を持つ仲間と力を合わせ、男性は車を運転できるまでに回復したという。加古川市中央消防署から感謝状も贈られている。
人のために動き続けている人は、いざというときにも動ける——改めてそう思った。
お問い合わせ(取材当時の情報)
トップアスリートのメンタルトレーニング経験を持つ藤中氏が、専属トレーナーとしてサポートを行っていた。また、企業カウンセラーとしても活動されていた。
以下は2018年時点の連絡先です。現在も同じ情報が有効かどうかは不明なため、ご利用の際は直接確認されることをおすすめします。
藤中琢也 氏
〒600-8891 京都市下京区西七条東八反田16
mail:fuji.spc.taku-7☆ezweb.ne.jp(☆を@に変更してください)
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