8年間、子どもを望み続けた私がこの作品を語る理由があります。
不妊治療を経てようやく授かった命。しかし妊娠直後に夫の風邪をもらい、1週間近く高熱が続きました。
階段から落ちたこともありました。
それでも無事に産まれてくれた、あの感謝と感動は、今でも胸の奥に刻まれています。
だからこそ、沖田×華さんの『透明なゆりかご』は、私にとって読むのが苦しい作品でした。
それでも読み終えたとき、「この子が私のところへ来てくれた喜び」をもう一度、深く再確認することができたのです。
女性であること、命のこと、変わりつつある社会のこと――いろいろなことを考えずにはいられない作品です。
『透明なゆりかご』とはどんな作品か
元看護師・元風俗嬢という異色の経歴を持つ漫画家、沖田×華(おきたばっか)さんによる実体験をもとにした漫画です。
看護学科の高校3年生の×華(ばっか)は母親のすすめで産婦人科医院の見習い看護師として働くことになる。中絶の現場やその後処置を体験して一時は辞めそうになるが、出産の現場に立ち会い、生まれる命の力強さに感動し、仕事を続けていく決意をする。

おとなしそうな女の子が中絶しにきていたり、高校生の女の子が自宅で産んだ子を産婦人科医院の前に置いていったり……「そんなことが本当にあるのか」と、現実を突きつけられる気持ちでした。
子を宿した女性が悩み苦しむ描写が、生々しくも淡々と描かれています。
この世に生を受けた喜びの「最初の一歩」の部屋と、図らずとも生と「さよなら」しなければいけない部屋が、同じ場所にあるなんて…。
考えたこともありませんでした。
沖田さんは、どこかで女性の持つ母性を信じている。不倫の子を産み、授乳中に窒息死させてしまった女性にも、子どもを捨てた女子高生にさえも、彼女たちの行動がすべて「極限状態の中で自分の子供を想って取ったもの」であってほしいと願う。「見えない愛情」は、どんな母親にもあるのではないかという沖田さん(『透明なゆりかご』1巻より)

8年の不妊期間を経て、私がこの本で感じたこと
私には、8年という長い不妊期間がありました。
「私は、もう母親になることはできないのだろうか」と夜空を見上げて、涙をこらえた夜が何度もありました。
ようやく授かった命でしたが、妊娠直後に夫の風邪が移り、1週間近く高熱が続きました。階段から落ちたこともあります。
お腹の子に何かあったらと、どれほど恐ろしかったか。それでも無事に産まれてきてくれた。
その感謝は、今も言葉では言い尽くせないほど、感慨深いものがあります。
なかなか子どもに恵まれなかった経験があるからこそ、「子どもを授かる」ということの重さを、人一倍考えてしまいます。
この本を読んで苦しかったのは、その重さを知っているからこそでした。
望んでも望んでも授かれなかった命が、こんなにも簡単に「さよなら」させられる現実――それは、私にとって胸を締め付けられるような痛みでした。
でも同時に、読み終えたとき、こう思いました。「この子が、私のところへ来てくれた。それがどれほど奇跡だったか」と。
この本は、子どもを持つすべての親に、そのことを思い出させてくれる物語です。
望んでできた子どもなのに、毎日の要求に追われて、つい叱ってしまう。怒った後に来る自己嫌悪。そんなとき、この本を開くと思い出すのです。「あのころは、生まれてくれただけで、それだけで嬉しかったんだよな」と。
若い世代にこそ読んでほしい理由
夏休みという季節に、このドラマや原作漫画がたびたび話題になるのには、理由があるように感じます。
若い世代が「命をつくること」に最も近づきやすい季節だからこそ、この作品が持つメッセージは響くのではないでしょうか。
「性の解放」が加速する社会の中で、命が生まれることの重さ、そして生まれてこられなかった命の重さを、淡々と、しかし確かに伝えてくれる作品です。
夏休みが終わったあと、産婦人科へ駆け込む若い人たちへの、静かな教科書になるのではないかと思っています。
NHKドラマ版について
本作はNHKでドラマ化されており、主人公アオイ役を清原果耶さんが演じました。
【清原果耶さんからメッセージ】
この度「透明なゆりかご」の全話を再放送して頂けることになりました…!
先ずはこの作品に想いを寄せ、応援して下さった方々に感謝を込めて。本当にありがとうございます。
主人公のアオイちゃんが命という言葉では温め切れない存在にそっと触れて、それが確かなものなのだと教わっていくこの物語に、撮影当時、私自身も感銘を受けました。
原作の沖田×華さんを始め、脚本の安達さん、監督、この作品に携わって下さった全てのスタッフ・キャストの


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