ずっと探していました。「いつかCD化されるはず」と信じながら、何年も。そのアルバムがようやく手元にやってきたとき、正直しばらく棚に飾ったまま眺めていました。…それくらい、待望の一枚だったのです。
アレクシス・ワイセンベルク「お手をどうぞ」による変奏曲作品2・ポーランド民謡による幻想曲作品13・ロンド「クラコヴィアク」作品14——ファン待望のCD
このアルバムは、ショパンが書いたピアノと管弦楽のための作品のうち、2曲のピアノ協奏曲を除いたすべてを収めた一枚です。収録されているのは以下の4曲。
- アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 作品22
- 「お手をどうぞ」による変奏曲 作品2
- ポーランド民謡による幻想曲 作品13
- ロンド「クラコヴィアク」 作品14
「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」は、ワイセンベルクの別のアルバムでも聴けます。でも、残りの3曲——Op.2・Op.13・Op.14——は、このアルバムでしか彼の演奏を聴けない。だから、貴重なのです。

CD帯の言葉が、すべてを言い表している
このアルバムのCD帯には、こんな一文があります。
ワイセンベルクとスクロヴァチェフスキは、ショパンのピアノ協奏曲2曲も同時期に録音しており、高いテンションに付かれた両者の演奏は、思わず襟を正したくなる見事さです。
「思わず襟を正したくなる見事さ」
まさにこの言葉、私も同感です。ワイセンベルクのアルバムには、なぜか背筋が伸びるものがある。正座して聴きたくなる、とでも言うのでしょうか。そういう演奏家は、なかなかいません。

ワイセンベルク版「お手をどうぞ」変奏曲作品2——シューマンが「脱帽せよ!」と叫んだ名曲
正式名称は、「ドン・ジョヴァンニ」の「お手をどうぞ」の主題による変奏曲 Op.2 CT225 変ロ長調。モーツァルトのオペラ《ドン・ジョヴァンニ》第1幕に登場する、ドン・ジョヴァンニとツェルリーナの二重唱「ラ・チ・ダレム・ラ・マーノ(お手をどうぞ)」から主題をとった変奏曲です。友人ティトゥス・ヴォイチェホフスキへの献呈作でもあります。
そしてこの曲、音楽史に残るエピソードがあります。
シューマンが、自ら主筆を務めた『音楽新報』(ドイツ・ライプツィヒ発刊)の1831年12月7日号で、「諸君!脱帽せよ、天才だ!」と絶賛したのは、この作品。
出典:ピティナ 弾く!聞く!学ぶ!
シューマンにそう言わしめたショパン、20歳のときの作品です。若き天才の漲るエネルギー。それをワイセンベルクの指が再現するとき、何かとんでもないものが生まれる——聴けばわかります。
ポーランド民謡による幻想曲作品13・ロンド「クラコヴィアク」作品14——この演奏はここでしか聴けない
Op.13「ポーランド民謡による幻想曲」とOp.14「クラコヴィアク」は、ショパンの協奏曲ほど演奏される機会が多くない、いわば「知る人ぞ知る」作品群です。ポーランドの民謡や舞曲のリズムを大胆に取り込んだこれらの曲は、若きショパンの故郷への愛着と、作曲家としての野心が同居している。
ワイセンベルクとスクロヴァチェフスキのコンビがこの3曲を録音したのは、ピアノ協奏曲と同時期。両者のテンションが高い状態で収録されたことが、演奏の密度に如実に表れています。これほどの演奏が長らくCD化されていなかったこと自体、不思議なくらい。


Amazonで試聴・購入できます——在庫があるうちに
かっこいい、としか言いようがない一枚です。Amazonのページから試聴もできるので、まずは音を確かめてみてください。
クラシックのCDは増版がほとんどありません。廃盤になってしまうと、コレクターからの購入しか手がなくなり、価格もかなり跳ね上がります。ワイセンベルクがお好きな方は、早めにチェックしておくことをおすすめします。
胎教で聴いていた「お手をどうぞ」——息子の一言に驚いた日のこと
実はこの曲、私にとってとても個人的な思い出があります。子供がおなかにいたころ、勤めていたヤマハの楽器店まで片道30㎞の道のりを、毎日この曲をかけながら運転していたのです。
当時は車にCDデッキなどありません。レコードからダビングしたカセットテープ。それでもワイセンベルクの洗練された技巧は、30㎞の距離を苦にさせないほどの力がありました。毎朝この曲と共に走る時間が、一種の儀式のようだったと思います。
そして——息子が4、5歳のころ。ピアノのレッスンへ向かう途中、久しぶりにこの曲をかけて運転していると、後部座席から小さな声が。
「これ、聞いたことある」
おなかの中で聴いていたのですね。音楽の記憶って、不思議です。そしてそれがワイセンベルクの演奏であることが、なんだかとても嬉しかった。
まとめ——アレクシス・ワイセンベルクの「お手をどうぞ」作品2・幻想曲作品13・クラコヴィアク作品14を聴くなら今
ショパンの協奏曲以外のオーケストラ作品を、ワイセンベルクとスクロヴァチェフスキのコンビで聴けるのは、現状このアルバムだけです。特にOp.2・Op.13・Op.14の3曲は、他では手に入らない演奏。クラシックCDは待っていると廃盤になる——そういうものです。
ワイセンベルクが好きなら、迷っている時間はないかもしれませんよ(笑)
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